馬鹿と滑瓢は使いよう 01


「そういえばさあ」
 この幼馴染がこんなことを言い出したときの地雷率は、唐瓜の経験によればおおよそ五分五分といったところだろうか。日頃から振り回されているため、若干バイアスがかかっていることは察してほしい。
 唐瓜は本日の昼食であるエビフライ定食を食堂のおばちゃんから受け取りつつ、茄子の話に耳を傾けてやった。唐瓜が返事をしようがしまいがこのおたんこなすびは話を続けるのだろうけれど、唐瓜は基本的にイイヤツなので、ほぼ条件反射ではいはいどうしたと口にしているのだった。
「今日おれたちの部署で欠勤出たじゃん」
「そうだっけ」
 唐瓜に続いて茄子も昼食を受け取る。昨日、一昨日に引き続き、今日もマグロ丼だった。茄子は一度はまると一週間はおなじメニューを頼み続ける。いまは魚にご執心のようで、先週は焼き鮭の定食を毎日食べていた。焼き鮭をやめた理由は「小骨がめんどくさい」からだそうだ。鬼のくせに細かいことを気にするやつである。さすがの唐瓜も小骨の面倒までは見てやれない。
 どこの部署も昼休憩に入っていて、そこそこ食堂は混み合っている。唐瓜は二人分の席を探すために見回しながら、茄子の言葉で今朝のことを思い返した。ああそうだ。確かに風邪をひいたとかで欠勤を連絡してきた先輩がいた。午前の業務に忙殺されてすっかり忘れてしまっていた。
「そのわりにはあんまり忙しくなかったよなって思って」
「そうかあ? 感覚としてはいつもどおり忙しいってかんじだったけど」
「いつもどおりだったんだろ?」
「……まあ、それもそうか」
 茄子の言うことも一理あった。どの部署も従業員不足は深刻で、たった一人といえど欠勤が出ればフォローにはそれなりに苦労する。他の獄卒に仕事を割り振るにしても、唐瓜や茄子のような新人ではできないものもあるし、そもそも他人の仕事を受け入れられるほど余裕のない従業員もいる。いつもどおりだったということは、そのフォローがうまくいったのだろうか。
「先輩の話だとさァ、たまにこういうことがあるんだって」
「こういうこと?」
「欠勤したやつの分の仕事が知らないあいだに終わってんの。今日のはそれじゃないかって言ってた」
「ハァ?」
「閻魔庁七不思議の一つらしいぜ」
「七不思議って……ここ地獄だぞ」
 幽霊もこわくない鬼がなにを言っているのか。幽霊なんて結局お迎え課のお迎えを逃れた亡者だし、回収して地獄に来てしまえば呵責対象だ。ほら、なんにもこわくない。
「でも不思議だよな~。なんかいるのかな。ほら、座敷童みたいなさ」
 いくら妖怪神様なんでもありの場所とはいえ、閻魔庁の中には鬼以外の獄卒は少ない(まして座敷童のような妖怪ならなおさらだ)。真っ先に思い浮かぶのはお迎え課の荼枳尼天だが、彼女はもともと悪鬼で、人間の死期を悟るという能力を買われてここの補佐官に引っこ抜かれた神だったはずだ。唐瓜の知らない神や妖怪もここに勤めているのかもしれないが、七不思議になるくらいだから知られていないということだろうか。
「というか、あとの六つって」
「あっ、鬼灯さまだ」
 七つ揃っていなければ七不思議とはいわない。唐瓜が残り六つの詳細を茄子に尋ねようとしたところで、茄子は声を上げて唐瓜を追い抜いてしまった。視線を向けると、荼枳尼天を引き抜いた件の補佐官、鬼灯がひとりで昼食をとっている。茄子は彼にかなり懐いているのだ。そんな犬みたいに懐いていい立場の人ではないと思うのだが、鬼灯本人に咎められたことはなかった。ドジの多い幼馴染が転ばないかハラハラしつつ、自分もエビフライの安全を確保しながら後を追う。
「茄子さんに唐瓜さん、どうも。お疲れさまです」
「お疲れさまです鬼灯様」
「ここ座っていいですか!」
「こら茄子、挨拶くらいしろよ」
「こんにちは!」
 ガキか。不喜処のシロに子どもだと勘違いされたことがある唐瓜と茄子だが、だいたいこいつのせいだと思う。
「構いませんよ」
「わーいありがとうございます」
「どうもすみませんほんと……」
 茄子は喜んで鬼灯の向かいの席に腰を下ろした。どんぶりが載った盆を置いて、それから両手を上へ挙げる。なにをしているのかと問えば、お盆を持っていて万歳ができなかったので、いましているのだという答えが返ってきた。とてもじゃないが、唐瓜にはこんな生き方はできない。そう思いながら隣に座った。
 いただきます、と手を合わせて箸をとる。環境に配慮して、最近食堂は割り箸を出さなくなった。妙なところで現世とリンクしている。割り箸はよくささくれが刺さるので、あまり好きではない唐瓜だが、茄子はしょっちゅうへんてこな割り方をして、そのたび自慢してくるので嫌いではなさそうだった。
「なんの話をしていたんですか?」
「え? ああ、閻魔庁の七不思議がどうのって茄子が言い出して」
「七不思議ですか。そんなのありましたねえ」
「鬼灯様もご存知なんですか。俺知らなくって」
 鬼灯が知っているということは、それなりに知名度はあるのかもしれない。しかし、彼も大概変わり者であることに違いはないので、基準にするには若干のためらいが残る。
「『いない人の仕事を肩代わりしてくれる妖精さん』が出たんですよ、うちの部署」
「七不思議ってそんなメルヘンなかんじだったんだ!?」
 こんなありがたい七不思議があっていいのか。というかここ日本地獄だろう。なぜ西洋のフェアリーが出るんだ。
「なるほど。そういえば今日、あなたたちの部署には風邪で休んだ方がいましたね」
 納得するように頷いた鬼灯が味噌汁をすする。
「鬼灯さま、休んだ人のことまで把握してるんだ」
「さすがに地獄すべてを網羅しているわけではありませんが、そうですね。ここは裁判がらみの従業員も多いので、把握しておかないと困ることもありますから。十王庁はどこの補佐官も把握していると思いますよ」
「そっか、裁判が滞るのがいちばん困るもんな」
「もしかして、その妖精さんって鬼灯さまだったりして~」
 茄子がけたけたと笑ってそんなことを言う。意外と鋭いところのある茄子だが、今回ばかりはすぐに否定された。
「まさか。私にそんな暇があるわけないでしょう」
「だよなあ」
 本人も冗談のつもりだったらしい。そりゃそうだよな、と唐瓜も思う。鬼灯には鬼灯にしかできない仕事が山ほどあるのだ。いくら仕事中毒とはいえ、末端獄卒の代替がきく労働のフォローまでさせていたらぶっ壊れるだろう。というか、ぶっちゃけこの鬼神に妖精さんという言葉を当てはめることにものすごく抵抗がある。主に目つきとか諸々で。失礼なことを考えていたのがばれたのか、鬼灯に一瞥され唐瓜は思わず身をすくませた。
 鬼灯はなにごともなかったかのように唐瓜から視線を外し、小皿に載った漬物を箸でつまんでその小さな口に放り込む。そしてぽりぽりとよい音を立てながら、おそらく本日一つめの爆弾を投下した。
「まぁ、その妖精さんの正体なら知ってるんですけどね」
「そうなんですか!?」
 さすが地獄の創設にも一役買っただけのことはある。地獄のどこをとっても、だいたい最終的に行きつく先は彼なのだ。七不思議も半分くらい彼が関わっていてもおかしくはない。むしろそれ以外にあるのかよ、と唐瓜は密かに思った。
「鬼灯さまはすげえなあ。妖精さんとも知り合いだなんて」
「おまえはもうちょっと驚けよ……話振ったのおまえだろ」
「知り合いもなにも部下ですよ。仕事してるんだから獄卒に決まってます。ただ働きなんてさせてません」
「やっぱり神か妖怪の類なんですか?」
「その認識で間違ってはいないですね」
 なにやら曖昧な表現だと、唐瓜は内心で首をかしげた。
「なあ唐瓜、これってもしかして妖精さんとおんなじ職場で働いてることになる?」
「えっ、あー、一応そういうことになるのか。つか気にするのそこ?」
「そっかあ。会ってみたいな」
 茄子は興奮気味に足をばたつかせ、行儀が悪いと鬼灯に咎められた。鬼の中にもさまざまな種族が存在するが、食堂の椅子はすべておなじ高さになっている。一応平均サイズに合わせてあるらしい。閻魔大王には特別に椅子が用意されているが、唐瓜や茄子のような小鬼は足が宙ぶらりんになるのを受け入れるしかないのだった。落ち着かないのは唐瓜もよくわかるのだが。
 そして、唐揚げをもぐもぐと咀嚼していた鬼灯が二つ目の爆弾を落とす。
「妖精さんなら茄子さんのすぐ目の前にいるんですがね」
「えっ! どこどこ!? どこですか!?」
 これには茄子も立ち上がりかねない勢いで驚いて、食堂をせわしなく見回した。唐瓜もつられて見回したが、いや待て、目の前にいるなら正面にいるはずだ。しかし、前を向いた唐瓜の視界には鬼灯しかいない。
「ここです、ここ」
 鬼灯が左手でなにかを持ち上げた。唐瓜も茄子も、視線をそちらに集中させる。
「は……?」
「あれ?」
 四人掛けのテーブルには、鬼灯と、その正面に茄子と、その右隣に唐瓜が座っていた。唐瓜の正面、つまり鬼灯の左隣には、たしか空席だったはずだ。はずであった、のだが。
 唐瓜は自分の目を疑って、目をこすり頭を振ってもう一度自分の向かいの席を見た。さっきまで誰もいなかったはずのそこには、補佐官の手によって首根っこをつかまれ、子猫のように持ち上げられた小鬼の姿があった。小さな二本角を頭に生やしたその小鬼は、左手にご飯を盛った茶碗、右手に箸を持った状態で、目を見開き唐瓜を見ていた。驚いているのは唐瓜だけではないらしい。置かれた盆を見ると、どうやら唐揚げ定食を食べていたようだ。おや、と思って鬼灯の盆に視線を移す。鬼灯が食べていたのはカツ丼の味噌汁セットだ。唐瓜の記憶が正しければ、先程鬼灯は唐揚げを食べていたはずである。ああ、この子の盆から唐揚げをとって食べていたのか。なあんだそういうこと……。
「ギャーーーー!」
 驚きのあまり唐瓜とその小鬼が声を揃えて叫んだ。
「やかましい!」
「ぎゃんっ!」
 鬼灯に漬物が載っていた皿を投げつけられた。例の小鬼はビンタを食らっている。いきなり大声を上げたものだから、周囲の視線が唐瓜に集まった。しかしまぁ唐瓜が痛めつけられているのはしょっちゅうとはいえずとも、この補佐官相手なら誰でもままあることなので、皆特に気に留めず食事を再開する。なんだかとても解せない。
「すみません……。で、でもそれ、その人」
「妖精さん!?」
「そういうことになります」
 頬を腫らした妖精さんは、椅子に座って両手で顔を覆ってしまっていた。茶碗と箸はきちんと盆に置かれている。ビンタで吹っ飛ぶことはなかったようだった。
「み、見ないでください……」
 妖精さんは食堂の喧騒にかき消されてしまいそうな、か細い声で要求する。唐瓜と茄子で顔を見合わせたが、鬼灯は問答無用と言わんばかりに再び妖精さんの首根っこをつかみ上げてしまった。
「挨拶くらいきちんとなさい。はい、まずは自己紹介!」
「ヒィィィ」
 鬼灯は空いたほうの手で小さく悲鳴を上げた妖精さんの両手首をつかみ、無理やり頭上に移動させる。首根っこをつかまれた上に、両腕を頭上にまとめ上げられた妖精さんは、顔を隠すすべを失い真っ青になってしまっている。なんだか見覚えがあると思ったらあれだ、呵責前の亡者みたいだ。妖精さんめっちゃ泣きそう。唐瓜は心の底から同情した。
「あ、わ、わたし、あの、閻魔庁で、はっ働かせてもらってます、と、申します。その、よ、よろしくお願いします……」
 涙声で言い切った妖精さん、もといは、最後にかくんともはや頭を下に向けただけのおじぎをした(一瞬本格的に意識を飛ばしたのかと思ってひやっとした)。そこで鬼灯はの腕を解放し、椅子に座らせてやる。
「たいへんよくできました」
 子どもを褒めるというより、これはどちらかというと犬に対するそれのようだった。
「あ、ええと、こちらこそよろしくお願いします……俺は」
「ああ、彼女唐瓜さんや茄子さんのことはよく知っていますから構いませんよ」
「え?」
「採用関係は一括でやるので、その時期にはそこそこ忙しくなるんですよね。そこで彼女の手も借りたんです。履歴書も見てますし、あなたたちの面接のときにもいましたよ」
「いたの!?」
「ぜんぜん気づかなかった……」
 緊張していて面接官を覚えていない、なんてことはあるものだが、少なくとも自分とおなじ小鬼がいたら覚えている、と思う。茄子の言うとおり、気がつかなかったという言葉がおそらく正しい。
「というかその、さん、突然現れたように見えましたけど……」
 おずおずと、ずっと気になっていたことを問う。盆が置いてあることにすら気づかなかったというのは明らかに異常だ。なぜ鬼灯が注文していない唐揚げを食べていてもスルーしてしまっていたのか。
 鬼灯はに視線を向けた。彼女は視線をうろうろと泳がせながら、先刻の自己紹介よりはよどみなく、話しはじめた。
「ええと、わたし、妖怪とのハーフで」
「おれとおなじだ!」
 茄子は妖精さんとおそろい~、とまた足をばたばたさせた。
「妖精さんはなんの妖怪とハーフなの?」
「敬語使えよおたんこ茄子……」
 面接官をしていたということは、は唐瓜や茄子よりも先輩獄卒のはずだろう。あと名前で呼んでやれ。
「ぬらりひょん」
 の答えがあまりにも意外で、思わずおうむ返しに聞き返した。
 ぬらりひょん。漢字では滑瓢と書く。瓢とはひさごとも読むが、つまりはヒョウタンのことだ。現世では廃れて久しいものだが、あの世では用いられることも多い。ぬらりひょんは現世でもそれなりに有名な妖怪で、百鬼夜行を率いる妖怪の総大将ともいわれている。
「めちゃくちゃすごい妖怪じゃないですか!」
 総大将の娘。どうしてもヤクザの組長の娘のようなイメージを感じてしまうが、なんだかすごそうだ。
「妖怪の総大将って白澤さまみたいな?」
「そういえばあの人も中国妖怪の長か」
 そうやっていわれると途端にあんまりすごくなさそうに感じるのは、本人に失礼だろうか。
「あのちゃらんぽらんと一緒にするのは甚だ失礼だと思いますが。ぬらりひょんが妖怪の総大将というのは本人曰く誇張表現だそうですよ」
 宿敵白澤の話が出たためか、鬼灯は不機嫌そうな顔と声を隠しもしない。舌打ちまで聞こえたが、唐瓜は聞こえないふりをした。
「のっぺらぼうの妖怪だと記すものもありますが、だいたいつかみどころのない、要領を得ない妖怪だとする場合が多いですね。ぬらりひょんの類語として、瓢箪鯰という言葉があります。これはつかみどころのない人のことを指す言葉で、もともとは瓢箪で鯰を押さえるという慣用句からきています。ぬらりひょんにも瓢という漢字があてられていますが、どちらが先にあったのかはよくわかりません。関係があるのはおそらく確かでしょうが。ちなみに、ぬらりひょんの語源自体は、なめらかで奇妙なことからとされています」
 ぬらりはなめらかなことを表し、ひょんは妙なという意味の「ひょんな」という言葉からきているのだそうだ。伝承によっては擬音だという説もある。
「どちらかというとぬるぬるしてそうな響きだよな……」
「結局なんなのかよくわかんねえな!」
 茄子の言葉は身も蓋もなかったが、唐瓜もだいたい同意だったし、鬼灯もまぁそうですねと頷いた。話の着地点がいまいち見当たらず、全員が黙り込む。
「ていうか、なんでおれたちぬらりひょんの話なんかしてたんだっけ?」
「おまえなあ」
 首をかしげる茄子に唐瓜が呆れたように言葉を発したが、それが最後まで紡がれることはなかった。なぜなら、唐瓜もそこのところがよくわからなくなっていたからである。ぬらりひょんが妖怪の総大将と呼ばれるのはある種の誇張表現で、実際は瓢箪鯰のような、つかみどころのない、よくわからない妖怪で。そんなよくわからない妖怪の話をなぜ、いましていたのか。それこそよくわからなかった。
 ふとテレビに目を向ける。地獄で映るテレビだけに、妖怪特集なんかをやっていることもあるけれど、映っているのは昼の情報番組だ。コメンテーターの席ににデザイナーの釜彦の姿があった。CMに切り替わると、マキミキが今度新しく出る予定のユニットシングルの宣伝をしている。ピーチ・マキがソロで出していた曲は、不喜処のシロがよく口ずさんでいるが、デュエットは一人ではなかなか歌えないと愚痴っていた。それを聞いた茄子がじゃあおれミキパート覚えてくるよと提案し、それに唐瓜も付き合わされ、唐瓜は両パートを習得してしまったのを思い出してちょっとげんなりした。すごくいらない。
「あのクソ妖怪め……」
 唐瓜と茄子が二人して首をかたむけ、顔を見合わせていると、鬼灯が地を這うような声でなにごとかをつぶやいた。よく聞こえなかったが、触れないほうが身のためだった。
「あれ? 鬼灯さま、それ」
 茄子が鬼灯の盆を覗き込む。ボリュームのあるカツ丼は、すでにきれいさっぱり鬼灯の胃に消えている。その空になったどんぶりの底に、唐揚げがぽつんと一つだけ残っていた。五官庁の補佐官、樒提供のレシピで作られた唐揚げは絶品で、唐揚げ定食を注文する者は多い。
「なんで唐揚げ?」
「どっかから飛んできたのかな」
「唐揚げが?」
 先ほどからよくわからないことばかり起きている気がする。
「食べますか?」
「いや、よくわかんないし……」
 得体の知れぬ唐揚げだ。腹でも壊すかもしれない。唐瓜は遠慮したが、茄子がじゃあおれが食べますと言うので、鬼灯はその唐揚げを箸でつまんで茄子のどんぶりに入れてやった。それから席を立つ。
「では、私は業務に戻ります。ごちそうさまでした」
「あ、お疲れさまです」
「午後も励んでください」
「はい!」
 愛用の金棒と盆を持って返却口へ向かう鬼灯の後姿を見送った茄子は、自分の盆に向き直って、鬼灯からもらった謎の唐揚げを見る。
「まじで食べるの?」
「もったいないじゃん」
「そうだけど」
 唐瓜の心配そうな視線など意にも介さない茄子は、ぱくりと一口で唐揚げを頬張った。小鬼の口には大きそうだが、もごもごと咀嚼する。
「変な味とかしないよな?」
「んーん、うまいよ! 明日から唐揚げ定食にしよう」
「あっそう……」
 マグロ丼、一週間ももたなかったな。